LALALA
「俺はいっつも、祐樹の陰に隠れて気後れしてて。大学出た後、就職決まんなくてなりたいこともなくて。理容師だけは、なりたくなかったんだけど…」


…そんな過去があったんだ。

人を元気づける、勇気づける言葉の背景には、きっと、いろんな経験があるのだろう。
その頃の芝崎さんのことを想うと、私がもしも傍にいたら。

恥ずかしいから、不器用に。
ぎゅっと真横から隙間なく。

包み込みたくなるよ。


「出来ましたよ、焼いただけですけど」


明るい声で言いながら、私はピザを乗せたお皿を、テーブルの上に置いた。


「今、取り皿持ってきますね」
「季里ちゃん、」


立ち去ろうとしたら、後ろ手を掴まれた。


「は、はい?」
「家賃なんて要らないから。こっから出てかないでよ」


今のところ、引っ越す予定はないんだけど…。食器棚も本棚も、確かに引っ越しの荷造り中みたいな虫食い状態で。
勘違いされちゃったかな。

懇願するような口振りと、私を凍てつける手の力。
緩急がすごくて、戸惑うけど。

瞳は、真っ直ぐで。
いつも揺るぎない。


「あの、私…」
「俺のこと、恋愛対象として見れないのは仕方ないけど、」
「見てる、私。私芝崎さんのこと、恋愛対象として、見てます、たぶん…」


だから、私も応えたい。
< 52 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop