それはとっくに恋だった
何と言っていいかわからない私に母はさらに話を続けた。


「でもね、やっぱりそのことは心のどっかにずっと引っかかってた。

 お父さんはどう思ってるんだろうって。」


「今も思ってる?」



恐る恐る尋ねると、母は首を横に振った。


「お父さんね。泣いたのよ。」


「え?」


「生まれたての千尋を初めて抱っこしたとき。泣いたの。

 それでね。お母さんにありがとうって言ったの。その涙を見たとき、もうどうでもよくなったのよ。」


父が泣く姿なんて私には想像もつかない。


「それにね。出産が終わって、もう一回最初のエコー写真を見たとき、まぁ、確かにマルだなって思ったの。」


そう言って母はいたずらっ子のような顔で笑った。
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