白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 そこに乗っていたのは恵梨佳さんと支配人の二人だった。

 運転席でサングラスをかけながら「ハァィ」と手を振る恵梨佳さんの姿はとてもかっこ良かった。
 
 「どうしたんですかみんな」狐につままれた様にして訊くと

 「何ぼっとしてんだよ。せっかく来てやったのに」と宮村は悪戯をついた。

 実は昨日宮村は、僕がバイトするカフェに愛奈ちゃんと立ち寄ったことから始まったようだ。

 宮村は僕がヘルプに行ってるのを知りながら店で恵梨佳さんに僕の事を訊いたらしい。 

 僕がヘルプでここに行っていると訊くと「海かぁ、いいなぁ。愛奈行ってみるか」そう言って愛奈ちゃんを誘うと彼女は当然の様に「うん」と答え、恵梨佳さんたちが明日ここに行くことを知り

 「こりゃ全員集合だな」と言ってあっという間にレンタカーの手配をして沙織に連絡した。

 沙織は初めから来たくてうずうずしていたからすぐに二つ返事で「ハイ」と答え、そこにちょうど居合わせたナッキが「私も行く行く」と手を上げたらしい。

 ナッキが鼻をヘンッとさせて「サプライズだったでしょ」と言った。

 「うん、すっごい驚いた」

 ふと、それじゃ沙織は昨日からここに来ることを知って……顔が異常に熱くなった。沙織が耳元で小さな声で「ごめんね」と囁いた、それでまた顔が熱くなる。

 その横で恵梨佳さんが「そうよねぇ、驚くわよねぇ」と笑みを浮かべた。まだ何かありそうだったが、詮索はしなかった。

 沙織がまじまじと僕を見つめ「初めて見た制服姿」と漏らすと、恵梨佳さんがちょっと意地悪そうに


 「イケメンにこの制服はかっこ良過ぎるよね」と沙織の方を見ていった。それに沙織は顔を赤くして「うん、かっこいい」とつぶやいて恥ずがしていた。


 宮村は「やってられねぇな」といって愛奈ちゃんと顔を見合わせた。

 「それじゃ、私は店長に話をしてきますから」と支配人は店に向かい。

 そして、恵梨佳さんが

 「私たちも行きますか」と沙織とナッキを店の方に連れ出した。

 宮村は愛奈ちゃんと「俺ら一足先に海に行くから」とバックを手に砂浜の方へ向かった。

 何となく不自然な気がしたが、すぐに判明した。

 今日と明日、臨時で沙織とナッキがヘルプすることだった。
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