白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 もっとも二人とも後方支援である様だ。ただ、登録をしていないからバイト代は出ない。その代わり系列のあのホテルに二泊ご招待という事だった。

 これは支配人が手配してくれた。少しでも混んでいるのを待つお客様の事を考えての事。会社幹部の役職にある支配人が提案してくれたことだった。

 店長は「こんな綺麗どころのヘルプが来てくれるとは思いもしなかった」と喜んでいた。

 そして沙織が着る制服の姿は、とても新鮮だった。他の奴らが立ち止まりながら見惚れてしまうのも分かる気がした。一番見惚れていたのはなにせ僕だったから。

 沙織とナッキの仕事ぶりは目を見張るものがある。流石教師を目指すこともあって人の扱い、お客の扱いは大したものだった。

 待ち時間がかなりかかっているお客に笑顔ですいませんとちゃんと丁寧に接している、しかも何も臆することなく時には凛として仕事をこなしていた。

 僕は僕で厨房からトレーを片手にホールからテラスから縦横無尽に動き回っている。

同じホールにいる女の子達から「亜咲さんてすごいね。かっこいいし優しいしそれに物凄く仕事で来て、ほら、今日来たチーフの恵梨佳さんとも息ぴったりじゃない」なんて言ったのを沙織が訊いていた様だった。

 それを訊いて、嫉妬するかと持ったけど不思議と、とても誇らしかったと後でそっと僕に耳打ちしてくれた。

 ようやく今日のシフトが終わった。今日も物凄く忙しかったけど昨日ほどの疲れは感じていない。恵梨佳さんがいろいろフォローしてくれたのと、沙織が傍にいる安心感からだろうか。

 店長に昨日と同じように「お疲れ様でした」とあいさつをした。沙織とナッキも今日は一緒に上がったから二人とも同じように挨拶をすると

 「いやぁ、急に来てこんなに仕事こなしてくれとは思いませんでした。本当にありがとうございます。今日は疲れたでしょう、ゆっくり休んでください。亜咲君は明日遅番でしたね」シフトの確認をされたので「はいそうです」と答えた。

 「亜咲君も今日はゆっくり休んでください。明日遅番だから少しゆっくりできまね。それとお二方は明日、中番でお願いします。えーと、そうだなぁ11時からでお願いできますか」

 沙織とナッキは声をそろえて「はい、宜しくお願いします」と答えた。
 そして、軽く会釈をして僕と一緒に店を出た。

 ホテルに向かう途中
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