フォーチュン
私は意を決して、宴の場である大広間へ行った。
鼻から下あたりは扇子で隠したおかげで、人工的なすみれ色の瞳だけが見える。
でも、目の形はアナと似ていると言われているし。

『これは国務です。あなたはアナスタシアとして、そしてわがバルドー国の代表として、宴に出席するのです。国の将来がかかっています。失敗は許されませんよ』
『アンよ。おまえも王家の一員であれば、その責務を果たして参れ』

出発間際、父様と母様に言われた言葉が胃に響く。
せっかくご馳走を目の前にしているのに、食べる気もしないなんて・・・私らしくない。
でも幸い、ドラーク王国の国王様と王子様、それに王妃様は、ここから遠くの上玉座に座っていらっしゃることにホッとする。
あれなら私が姉になりすましていることなんて、彼らには分からないはず・・・。
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