フォーチュン
「アナスタシア?」
「いっ!?あ・・・」

アンジェリークは無意識に扇子で、また顔の下半分を隠した。

えーっと、この人。
顔は見たことある・・気がする。
アナの友人であることは確かだ。
でも・・・誰だっけ。
名前が思い出せない!

「ゴホッゴホッ」
「大丈夫?」
「え、え・・・。ごめんなさい。ちょっと風邪気味で・・・」
「そうみたいね。声が変わってる気がするわ」
「あら、お分かりになって?あ、何か熱も出てきたような気がする」
「だったら早くお部屋へ引き上げたほうがよくってよ。送りましょうか?」
「いえいえっ!やっぱり無理して来なければよかったわ。それではごきげんよう」

アンジェリークは扇子で顔の下半分を隠したまま、どうにか引きつった笑みを浮かべると、そそくさと大広間を後にした。

やっぱり私には無理!
誰かに成りすますなんて・・・。
でも一応宴には出た。
たぶん・・・5分くらい?だけど。
でも父様、私は責務を果たしました。
母様、これで・・・お許しください!

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