フォーチュン
ⅩⅤ
アンジェリークを乗せた荷馬車は、無事にビシューへと入国を果たした。
出入国の門が見えなくなると、すぐに荷馬車は止められ、アンジェリークは荷台から前の座席へと移動をした。

「窮屈だったでしょ?ごめんね」
「いえっ!そんな・・・」

贅沢を言える立場ではないということくらい、アンジェリークにも分かっている。

「ここまで来れば、もう大丈夫だからね」
「はい。どうもありがとうございます」

体の節々が痛む。
それはそうよね。
何時間もずっと荷台の影に身を潜めていたままの格好だったし。
それに門番に見つかりはしないかと、ずっと緊張しっぱなしだったから。

「大丈夫」とおねえさんに言われて、ようやく気を緩めたアンジェリークは、無意識に顔をキョロキョロさせて、外の景色を見ていた。

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