フォーチュン
この日、二人は日が沈んで暗くなる前に、野宿をする場所を定めた。
ヴァーロ川が流れるザーッという規則的な音が心地良く響く中、アンジェリークとディオドラは、一口サイズの甘い揚げパン「ファーロ」を食べていた。

「これ、ディオドラさんが作ったんですか?」
「うん。生地は数日保存できるからね。まとめて作っておくんだよ。でもファーロは揚げたてが一番おいしいね」
「それでも、程よい甘さで美味しいです」
「そう?ファーロはここ、グリアが発祥の地だって、アンは知ってる?」
「まあ。そうなんですか?」

実は私、ファーロという名前は知っていたけど、食べたのはハンナさんの出店が初めてなのよね。
確かに揚げたても美味しかった。
あれはつい2日前のことなんだけど、遠い昔のことのように思えてしまう。
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