フォーチュン
ディオドラ一味は、金品を巻き上げる盗み屋で、人の命を奪うマネは絶対にしないと決めている。
そしてディオドラは、たまたま迷い込んできたアンジェリークが、かなりの金と宝石を持っていることを、バッグを盗み見て知ったことから、この計画を思いついたのだった。
自分が襲われ、逃げろと言っても、純粋なアンは絶対逃げない。
そういった心理的な面はもちろん、自分からお金を差し出させることまで、ディオドラは全て計算していた。

結果として、ディオドラの計画は大成功。
アンジェリークはまんまと罠にはまったということだ。

「とにかく、これからグリアへ引き返すより、レアルタへ行ったほうが早い。今夜はレアルタの宿に泊まろう」
「でもお金・・・」
「私のがあるよ」
 
「通行料」も含めて、お代は十分もらったからね。

ディオドラは、ニンマリとほくそ笑むのを、かろうじてこらえた。

事の真相を何も知らないアンジェリークは、泣きながら「ありがとう、ディオドラさん」と何度も礼を言っていた。
人をむやみに疑うことを良しとはしない、心が純粋なアンジェリークにとっては、自分に良くしてくれたディオドラの裏の顔や、真実を知らないほうが、返って良かったのかもしれない。


それから数時間後の夕日が出始める直前、ディオドラと荷台に隠れていたアンジェリークは、無事レアルタ王国へ入国を果たしたのだった。
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