フォーチュン
「コンラ・・・ぅわっ!」

アンジェリークはユーリスに右手をつかまれ、前に引っぱられた。
その勢いで、私の髪と左手と空色のスカートがフワッと舞い上がる。
彼女は一瞬よろめいたものの、彼が手をつないでくれていたおかげか、こけることなく彼について走った。

「王子っ・・!」

ユーリスの護衛たちが、潜んでいた物陰から慌て出てきた。
そして追いかけようと駆け出したが、目の前に立ちはだかる愚者(フール)に阻まれ、立ち止まざるを得なかった。

「運命」
「・・・愚者?いつの間にここへ・・・」

「隠者のローブ」と呼ばれる真っ黒のローブに身を包んでいる愚者の身体と顔のほとんどは、文字通りローブに隠れている。
そしてどちらかと言うと小柄で、且つ老体の愚者がそこにいるのは、言い方は悪いが、石がそこに転がっているように見える。
しかし愚者の放つ威厳に、護衛の者たちは誰一人動くことができなかった。
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