フォーチュン
「運命の輪が廻り出したやもしれませぬ」
「だからといって、我らの任務を放棄するわけにはいかない!」
「そうだ!それに今は夏至祭の最中だぞ。この街中を王子単独で行動させることは、危険因子が多すぎる」
「ユーリス様なら大丈夫でございます。あのお方は賢い」
「だが・・・」
「今、ワタクシどもは過剰な詮索をする時ではございませぬ」

・・・何だ・・?
一瞬、愚者の外見が50歳ほど若くなって・・・俺と同い年くらいに見えた。
ていうか、愚者の外見は、いつもどおりローブに覆われてほとんど見えていないのに。

護衛長のコンラッドが、気の迷いを断ち切るように目を瞬かせる。
すると目の前には、隠者のローブを身にまとった愚者が・・・いつもの老体の姿のまま、そこに立っていた。

「運命でございます」

そう愚者は言って、ニタリと笑った。
フードを被っているため、顔の部分は口しか見えないせいか、コンラッドをはじめとした護衛の者たちは、なぜか愚者のその姿を見て、背筋がゾクッとした。

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