フォーチュン
「あっ・・・!」
「どうした?」
「いや、いえ、なにも・・・」
「そうか。ここの出店で頼もう」
「え?あ・・・はいっ」

・・・そうだった。
自分から「レモン水が飲みたい」と頼んでいたことを、ちょっとだけ忘れていた。

手馴れた調子で出店のおばちゃんに飲み物を頼むユーリスを、アンジェリークはじっと見ていた。

彼には高貴ないでたちというか、そういう雰囲気がありながら、街の人たちと気さくに話す親しみのような雰囲気も同時にある。
不思議な魅力を併せ持った人だ、コンラッドは。

「はい、レモネードとミント水ねー」
「ありがとう」
「1ルキアでいいよ」
「それだけでいいのか?」
「夏至祭価格!サービスだよ!」
「ありがとう。また来るよ」
「こちらこそありがとね!」

ユーリスが二人分の飲み物を持ち、アンジェリークは彼の腕にそっと触れる形で、すぐ隣にある憩いのスペースに移動した。
そこにあったテーブル代わりの大きく高さがある木樽の上に、ユーリスはグラスを二つトンと置いた。

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