フォーチュン
生命の木は、万物の象徴であり、この世界の中心であり、つながりであると言われている。
ゆえにドラーク王国では、生命の木をとても神聖なもの、というより、神そのものであると捉えられている。

そして、生命の木には不思議な力が宿っている。
幹に手を当てると、「メッセージ」が聞こえてくることがあるからだ。
それは毎回聞こえるとは限らないし、手を当てた全ての者が聞けるわけでもない。
タイミングは誰にも分からない。

ドラーク王国の王子であるユーリスは、お忍びでちょくちょく街へ繰り出すことがある。
そのとき、何度か生命の木の「メッセージ」を聞いたことがある。
聞いたときはその意味が分からなくても、後になって「そうか」と分かることもあったし、聞いてすぐに、「そういえば」と思う節があることもあった。

どちらにしても、生命の木のメッセージも、占術師の言葉同様、必ずといっていいほど当たると言われている。
それも、「占術師は生命の木の化身」と言われている理由のひとつだ。
そのユーリス王子は、執務室で仕事をしていた。

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