漂う嫌悪、彷徨う感情。

「美紗にだけは嘘吐き呼ばわりされたくないわ」

美紗に笑われた事が何だか恥ずかしくて、変に言い返してしまった。

「ですよね。 すみません。 お腹空いているならおせんべいの方を食べてください。 今、持ってきますね」

笑うのをやめた美紗が腰を上げ、会議室を出て行こうとするから、

「待って!! まんじゅう食うの!! 賞味期限がやばい!!」

と言いながら自分も立ち上がり、咄嗟に美紗の手を掴んだ。

別に逃げようとしているわけでもない美紗を逃がしたくなくて。 どこにも行かせたくなくて。

キャスター付きの椅子が物凄く遠くまで転がって行く程の焦りっぷりを披露する。

そんなオレに一瞬目を点にした美紗が、

「・・・賞味期限、気にするんですね」

声を震わせながら『くくくっ』と笑った。

「・・・するよ。 うるさいよ」

『カッコ悪いな、オレ』と思いながら、遠くの椅子をいそいそと取りに行く。 どこまでも格好の悪い自分。
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