漂う嫌悪、彷徨う感情。
「オレも美紗のお母さんに心配かけた事を謝りたいし、お礼もしたいから、今日はオレも絶対残業しない!! 定時で帰る!!」
美紗に笑い返すと、
「お礼って何の??」
微笑んでいた美紗の顔が、右側に少し傾いた。
「オレさ、美紗の事が好きな気持ちは変わらないのに、どうしたら良いのか分かんなくなっちゃったんだよね。 オレとの結婚が美紗を苦しめているのなら、手放して自由にさせてあげた方が美紗は幸せなのかもしれないって。 でも、やっぱり美紗の事が好きだから、どうしてもそれは出来なくて・・・って時に、美紗のお母さんが背中押してくれたんだ。 自分の大事な娘に酷い事をした人間の兄にそんな事、なかなか出来ないよ、普通。 凄く嬉しかった。 有難かった。 物凄く感謝してるんだ」
傾いた美紗と視線を合わせようと、自分の頭も左に傾けると、
「・・・嬉しいね。 自分の家族を褒められるって。 ・・・なのにワタシは、勇太くんの家族を悪く言ってばっかりだった。 最低だ。 本当にごめんなさい」
美紗はオレと目を合わす事なく、両手で顔を覆って泣き出してしまった。