漂う嫌悪、彷徨う感情。
「学年が上がって、クラスが変わってもいじめは続きました。 真琴ちゃんたちは、毎日ワタシがいるクラスにやって来ました」
喋りながら唇が震えた。 上下の歯が『ガチガチ』と音を鳴らす。 押し寄せる過去の恐怖に身震いする。
「親にはその事言わなかったの?? いじめを受けると分かっていて、毎日学校に通っていたの??」
日下さんは上着を脱ぎ、ワタシの肩に被せると、その上からワタシの肩を摩った。
「・・・ウチ、母子家庭なんです。 幼い頃に両親が離婚していて。 母は『親の都合で別れておいて、子どもにひもじい思いをさせたり、子どもの進路の選択肢を狭める様な事はしたくない。 大学にだって行かせたい』と言って、ワタシの為に必死に働いてくれました。 ・・・とても言えなかった。 学校に行きたくないなんて。 母に余計な心配かけたくなかった。 『死にたい死にたい』と毎日思っていたけど、母を想うと出来なくて・・・逃げ場がありませんでした」
「・・・良かった。 美紗ちゃんのお母さんが素敵な人で。 お母さんがいてくれて良かった。 お母さんの存在が美紗ちゃんを踏みとどまらせてくれたんだね。 美紗ちゃんが死ななくて良かった」
日下さんはそう言ってくれるけれど、