漂う嫌悪、彷徨う感情。

「今、こうして美紗ちゃんに無理に話をさせておいて何だけど、オレは基本的には言いたくない事は言わなくていいと思うし、聞かなくてもいいって考え方の人間なのね。 だけど、美紗ちゃんの話は吐き出すべきだと思う。 きっと思い出したくないんだと思うけど、心の中で上手く埋葬出来なかったから、しこりになって今疼き出しちゃったわけじゃん。 自分ひとりの力で成仏させられなかった思いなら、他人に聞かせてスッキリさせて葬ればいいと思う。 でも、それを話す事って苦しい事だとも思う。 だから、ゆっくりでいいよ。 美紗ちゃんの話したい言葉で、美紗ちゃんのペースでいいよ。 オレ、全然付き合う。 合わせるから。 休み休み話せばいいよ」

『それまでくだらない話しようぜー』と日下さんがワタシの髪を自分の人差し指に巻き付けて遊んだ。

「・・・なんで、自分の彼女の悪口を言うワタシに、そんなに優しく出来るんですか??」

ワタシには出来ない。 勇太くんを悪く言われるのは絶対に許せない。

「半信半疑だから。 ごめんね。 100%で聞くって言っておいて美紗ちゃんの事を信じ切れてなくて」

日下さんが申し訳なさそうに笑った。

なんて正直な人だろう。 だからワタシは、この人に正直な気持ちを言えるのだろう。

「・・・日下さんは、真琴ちゃんのどんなところが好きなんですか??」

ワタシには恐怖でしかない真琴ちゃんは、日下さんにとってはどんな存在なのだろう。

「オレの頭は便器に突っ込まないところー」

日下さんは笑いを取ろうと言ったボケなのかもしれないが、ダークすぎてちょっと笑えない。
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