空にとけた夜の行方。


そして、紙製のカップに注いでいって、オーブンに放り込む。ボタンを押して、温められていく音を聞きながら、私は溜息とは少し違う、やりきったという息をついた。


また沢山作っちゃったけど、クラスの女の子にでも配ろうかな。もしかしたら昨日舜くんに告白してた子にもあげることになるかもしれないけれど。


使った道具を洗って、オーブンを覗き込む。古いオーブンだから熱の入り方にムラがあるのか、膨らみ方が少々いびつだ。


けれどそれもそうか、と思う。舜くんのための分量の生地に、舜くんのためではないチョコレートが混ざったカップケーキが、きちんと膨らむのもそれはそれで妙だもの。


焼きあがるには、もう少しかかる。私は先程のようにソファに寄りかかり、重い瞼を素直に閉じた。時刻は午前3時を過ぎている。さすがに、眠い。


目を閉じると、不思議と浮かんでくるのは先程見た夜の色だった。あれはまるで、私みたいな色だった。そんなことをぼんやり頭の隅で考えながら、私はゆっくりと、ゆりかごのような眠りに堕ちていった。

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