空にとけた夜の行方。
「……寒い」
不意に吹き込んできた夜風が思いのほか冷たくて身を震わせる。ぼんやり眺めていたけれど、冷えてしまうからそろそろ入ろうか。
部屋に戻って、窓とカーテンまできちんと閉めた。私の心情のような、暗い世界は閉ざされる。それでも、どろどろしたものが全て取り除けたわけでは決して無くて。
くるりと振り向いて、明かりをつけたままにしていたキッチンを見やる。
──ちゃんと作ろうかな、カップケーキ。
そう思えたのは、どうしてだったのかわからない。それでも私は、自然とそちらに向かっていた。
ちょっと放置しすぎたけれど、多分大丈夫だろう。私はまた、無心に材料をかき混ぜる作業に専念した。
ほどなくして、生地は完成した。いつもと同じ、甘さを控えめにした、舜くんにあげるための生地が。
少しだけ迷って、私はそこにチョコレートチップを豪快に入れた。いつもは自分の分だけ取り分けてから混ぜるそれを、大きなボウルに、そのまま。
がっ、がっ、と混ぜていきながら、なぜだか少し、気持ちよさにも似た感覚を覚えていた。これで、このケーキは"舜くんのため"のものでは、なくなったからだろうか。