キミと私の好きなヒト
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終礼が終わると同時に席を立つ。
いつもは用事のない私が珍しく、慌ただしく荷物をまとめて教室を飛び出した。
そして隣のクラスに体を向ける。
すると、そこには同じような体勢の実加の姿。
まるで鏡に映ったかのようで、1度ぱちりと瞳をしばたいた。
「実加……」
「話、あるんだよね?」
「うん」
気持ちはリンクして、キミに繋がる。
久しぶりの感覚に心の奥がふるふると揺れていた。
「聞かせて」
そう言って実加はまっすぐ私を見つめる。
そっと近づいて、手を絡めた。
広がるぬくもりは同じ温度だ。
そのことに安心して、泣きそうになって。
家まで待つことなんてできず、かといってその場で口にするべきでない内容から、私たちは校舎裏に移動した。
人気のないこの空間が今は都合がいい。
自分と同じ顔を突きあわせる。
いつもより不安そうなキミと、いつもより堂々とした私。
なんだか、キミが私で、私がキミみたいだね。