意地悪な片思い

「あー終わった!」
 ぐーんと天井に両腕を突きだす。

最初から資料整理をやり直した私は、時間がかかることをいとわずに慎重にその仕事を終えた。時計の針はもう1時間も進んでしまっている。

「この気になるととことんやっちゃう性格、直したいなぁ。
そしたら大部疲れ減るはずなのに。」

 苦笑しながら最後の一冊であったファイルを私は棚にいれた。

「まぁそんな変なところで真面目なのが私だもん、しょうがないか。」
 誰も見ていないことをいいことに、一度大きくため息をこぼす。

そのままオフィスに戻る気になれずに、
資料室の隅に一つ置いてある、茶色の木の椅子に腰かけた。


横に広がる大きな窓の外、町明かりをぼうっと眺める。会社の下にはすぐ大きな道路があり、車のランプがピカピカと光っている。

さっきまで仕事に集中していたのに、
どうして暇になるとこうして頭の中を占領してくるんだろう…。

速水さんと木野さんの後ろ背を思い出していた。


「……。」
 速水さんってよく分かんないや。

告白してきたのはそっちなくせに意識してるのはなぜか私で、終始からかわれっぱなしだし。

全然私のこと好きそうじゃないし。
大体、何の絡みもなかった6つも歳の離れてる私に惚れるわけがない。

私の頭の中に我が物顔で突然ずんずん入ってきやがって。

ピシャン。
窓につけられている日よけのシェードを思いっきり下げた。


「帰ろ。」
 ポツンと私の声が響いた。

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