意地悪な片思い
「まだ今でもこわい?男のこと。」
「ううん。」
私はふるふると首を振った。
「男の人がみんなそうじゃないって分かってます、長嶋さんとか内川くんとか絶対そんなことないって思いますから。」
「でも、恋愛が続くって私はもう思えない。」
「うん。」
速水さんが相づちをいれる。
「恋の終わりを知ったら、たぶんみんなそうなっちゃうのかなって思うんですけど、
速水さんと私が付き合ったとして、あーいつか終わるんだろうなっていう気持ちが心のどっかでうごめいてて……。
だから、恋の終わりがすごくこわくて。
大好きだった人を、一番嫌いな人に変えてしまったのが恋愛だから。」
速水さんが優しくて素敵な人で、付き合いたいって思っててもこわいんだよね…。
でも、不思議。元カレと別れた後も数人別の男の人と付き合ったけど、こんな話しなかった。速水さんがはじめて―――
「なんかすごい嬉しい。市田のこと知れて。」
……また優しいこと言って。
「負い目感じなくていいよ。どっかで終わるって思って貰ってても全然かまわない。
そういう過去も全部含めて、俺は市田のことすきだから。」
「……うん。」
ばか。ストレートに受け止めないでよ、速水さんのばか。
「また泣いてんの?」
「泣いてないし。」
私は笑いながら答える。
「嬉し泣きしてるくせに。」
「うるさいですよ。」
また笑っちゃう。
でも、なんかね、
「速水さんにすごく今会いたいな。」
ぽつりと私の口から言葉が飛び出した。
「…明日、会えるよ。」
「うん。」
優しい彼の口調に、ぽっと心に火が灯る。
好きだってなかなか伝えられないけど、でもまだ伝えられてなくてよかったのかもしんない。伝える前に大切なことを打ち明けあえたから。
付き合う前に、お互い一番知っておかなきゃいけないキズってやつをさ。
「あ、てか、長嶋さんと内川くんとっていう前に、俺の名前も入れてね。俺も絶対そんなことないから。」
「え~?」
そのあとの電話は、いつものからかいが続いた。