婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
まあ……。
自分で言い出しておきながら、樹さんにはお試しする意志もないってことは本人からも聞いたし、そうじゃなくても見え見えだけど。


「……でも、私一人でありのままを話しても……多分、社長は、無意味じゃないって感じてくれると思います……」


まだ一週間に満たないこのお試し同居の中で、私がどれだけ樹さんにドキドキしたか……それを社長に報告すれば、決してお先真っ暗という印象は与えないんじゃないかな。


「なんか言ったか?」


無駄に前向きな私の独り言に反応して、樹さんがギロッと私を横目で睨み付けた。
その冷たい視線に一瞬身体を竦ませながらも、私は慌てて大きく首を横に振った。


「い、いえ、なんでもっ……!」


頬の筋肉がヒクヒクするのを感じながらも、私はなんとか笑って誤魔化した。


言い方を変えればただ能天気で楽観的と言われてしまう私のことを、樹さんはまっすぐ『すごい』と言ってくれた。
でも、樹さんの気持ちも無視して、もしかしたら……なんて夢見てることを知られたら、さすがに機嫌を損ねてしまうだろう。


「わ、私! 三十分みっちり働きます!」


やましさたっぷりな態度がバレバレだったと思うけど、樹さんが首を傾げただけだったから、私も急いでデスクに舞い戻った。
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