婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「その気って……。あのな、キスなんてただの挨拶だろうが。それだけのことで『責任取れ』みたいなこと言うなよ。つまらねえ」


樹さんは忌々しそうにそう言うと、ナプキンをテーブルに戻して、ガタンと音を立てて立ち上がった。


「悪いけど俺、仕事に戻る。生駒、お前は適当に親父の相手して戻ってこい」

「えっ……!?」


私の後ろを通り過ぎながらそう言う樹さんを振り返って、私も慌てて席を立った。


「そ、それなら私も……」

「元々親父が誘い出したかったのはお前だから。もうなにをどう言おうがどうでもいいから、勝手にしろ」

「そんなっ……」


テーブルから一歩離れた時には、樹さんは既にドアを開けていて、後ろ手でバタンと乱暴に閉めて出て行ってしまった。
その背中を見送っただけで、私はがっくりとこうべを垂れた。


……すごい怒ってる。
やっと少し近付けたと思ってたのに……。


なのに、私の消沈ぶりとは真逆に、社長も父もけろっとした表情で食事を進めている。


「帆夏、座りなさい。ちょっとからかい過ぎたが、樹君の反応は予想通りだ。なあ? 春海さん」


父が前菜をフォークにのせながら、私をそう促した。
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