婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「いや、予想以上に好感触ですよ」


父に話を振られた社長は、妙に楽観的な反応を返す。
そんな二人の前で、私はスゴスゴと席に戻った。
スカートの上に再びナプキンを敷いて、はあっと大きな息を吐いた。


「簡単に言わないでください。せっかくちょっと近付けたって思ってたのに、これじゃあ今週の苦労も水の泡……」


そう言いながら、お水のグラスを手に取る。


「いや。順調だよ。さっきも言ったが、樹はわかってて君に手を出したんだ。……ただ、どうやって君を大事にすればいいかわからないから、慎重になってるだけだよ」

「……は?」


社長が含み笑いをしながら言った言葉の意味がわからず、私は顔を上げて目を見開いた。


慎重?
大事に仕方がわからない?
一体なんのことだろう……?


私の視線を受けて、社長はふっと目を細めて笑うと、上着の胸ポケットから取り出した携帯を操作した。


「私だ。樹は出て行ったか?」


電話に向かって発した言葉で、相手が執務室で待機している秘書さんだとわかる。


「そうか。それじゃ、君もこっちに来てもらおうか」


秘書さんの返事を大きく頷きながら聞いた後、社長はそう指示をした。
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