婚前同居～イジワル御曹司とひとつ屋根の下～
「もしかして、この間社長と飲みに行った時のことかしら……？　そうだとしたら、樹君との関係を疑わせちゃったりしたかも。申し訳ありません」


そうやってまったく動じずに謝ってくる辺り、樹さんの言った通りそういう関係ではないことが窺える。
けれど、それを聞いて呆れた顔をしたのが社長だった。


「深雪。もしかしてお前、まだ樹にちょっかい出してるのか？」

「あの夜は飲み過ぎて、送ってくれた樹君に、ちょ～っと絡んじゃったんですけどね……」


社長が咎める様子も深雪さんが謝る様子も、全然悪びれた空気がない。
そんな二人に怪訝そうに口を挟んだのは、私以上に事態を把握していない父だった。


「あの……。私も深雪さんは存じ上げておりますが、樹君とはどういう……？」


社長と深雪さんに顔を向けながらチラッと私を見遣る辺り、父も樹さんとの関係を懸念したんだろう。
それに対して、深雪さんがニッコリ笑いながら父にしっかり向き合った。


「生駒副社長、失礼いたしました。私は彼の父方の従姉妹に当たります。年が離れているせいもあり、私は昔から樹君が可愛くて可愛くて。今でもついちょっかい出したくなるんですけど、もちろん男女の関係なんかありません」


深雪さんは父にはっきりそう返事をしながら、最後は私に視線を向けてそう言った。
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