婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
大きく顔を上げると、目の前でもくもくしている煙と、言われた通りの焦げ臭さに意識が向いた。
ギョッとしながら慌てて手元に視線を落として。
「……あああっ!!」
更に大きく目を見開いた。
なんてこと。
フライパンの中で、卵が二つ炭化して、黒い煙を上げている。
「ひゃあっ……!」
慌ててコンロを止めようとして、右手がフライパンの淵を掠ってしまった。
小指の下の側面にピリッとした痛みが走り、「熱っ!!」と声を上げ、反射的に手を引っ込める。
「バカか。なにやってんだよ」
樹さんの鋭い声が、さっきとは違う角度から聞こえた。
その方向に顔を横向けると、思いの外近くにいた樹さんの姿が、私の視界いっぱいに飛び込んでくる。
「っ……」
目の前に立ちはだかった樹さんの腕が私の腰元に伸びる。
スイッチを押して火を止めながら、コンロの上からフライパンをどかしてくれた。
そして焦げ臭さに眉間に皺を寄せてから、バカみたいに彼を見上げている私の右手を取り……。
「っ……!!」