婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
フライパンを掠ってジンジンしていた私の右手を自分の口元まで掲げると、カプッとまるで噛み付くように唇で咥えた。
少し赤くなっていた小指の下を、舌先でチロチロと舐め始める。


「いっ……樹さっ……!?」


目の前で繰り広げられるあまりに衝撃的な光景に、目の前に星が飛び、頭がクラッとしてきそうだった。
胸の鼓動も猛烈に打ち鳴っていて、軽く酸欠状態に陥りそうになる。


「あ。火傷って、舐めるんじゃなかったっけか。……ま、このくらいなら大袈裟にしなくても大丈夫そうだな」


一度唇を離し、私の手の皮膚の赤味を確認しながら、樹さんは口元を意地悪に歪めて笑った。
それだけで、確信犯だとわかるのに……。
今度は妖艶に目を伏せ、火傷の痕をペロッと舌を出して舐める仕草を、しっかり私に見せつけ始める。


「いいい、樹さんっ……!!」


ドッキ~ンと、心臓が大きく打ち鳴った。
顔だけじゃなく耳まで熱を帯びているのが自分でもわかる。


樹さんの口元に手を掴み上げられたまま、私は逃げ場を探して一歩後退した。
無情にもお尻がキッチン台にぶつかってしまい、それ以上の退路を断たれてしまう。
けれど。
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