婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
思わず身を乗り出して質問を畳み掛けると、樹さんは軽く身を屈めて泡を吐き出し、ぶくぶくと音を立てて口をゆすいだ。
両手で水をすくって顔を洗った後で、姿勢を正し、タオルで顔を拭いながらチラッと私を見下ろす。


そして、


「右手の火傷が痛くて服が脱げないなら、脱がしてやろうか?」


いつもより低めた声で、そんなことを言う樹さんの口角が意地悪に上がる。
私の顔はボッと音が出るんじゃないかと思うくらい、一気に血が上って真っ赤になった。


「いっ……いえっ! 全然大丈夫です、痛みませんからっ……!」


慌てて大きく飛びのくと、「遠慮しない遠慮しない」と、樹さんが歌うように言いながら私に手を伸ばしてくる。


「ひゃああっ……! ほんと、本当にっ!! 一人で出来ますからっ……!!」


悲鳴を上げながらその手をかいくぐって逃げ出すと、リビングに戻った時には、背後の洗面所から大爆笑する声が聞こえてきた。


「う~~っ……!!」


いっぱいいっぱいな気分で、意味不明な唸り声を上げながら、私は自分の部屋に飛び込んだ。
背中で勢いよくドアを閉めると、そのままへなへなと床に座り込んだ。
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