婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
樹さんがそう言いながら動かす唇が、微かに耳を掠める。
それだけで私はまっすぐ立ってられないくらい足が震えてしまう。
その上、言われた言葉があまりにも際ど過ぎる……!!


「や、やだ、なに言って……!」


私は必死にそう声を上げると、樹さんの腕を振り解いて彼から距離を取って離れた。
そのまま、勢いでストンと床に座り込んでしまった。


ギシッと床を軋ませながら樹さんが一歩踏み出した足が、私の目線のど真ん中でピタリと止まった。
樹さんが私の目の前で片膝をついてしゃがみ込む。


顎を掴まれ、俯けていた顔を強引に上向けられた。
私は樹さんをまっすぐ見上げてしまい、反射的に目を背けようとした。
けれど……。


「……俺のこと好きだって言うわりに、なにも仕掛けてこれない女相手に、どうしろって言うんだよ」


樹さんが、不貞腐れたようにボソッと呟いた。
その言葉に、私はただ大きく目を見開く。


「絶対仕掛けてこれないってわかってるのに、この後三ヵ月も一緒に過ごしたって無駄だろ。こんなんじゃお互いの為にならないから、わざわざこっちから仕掛けてやってんのに。嫌なら、さっさと逃げろよ。……俺から」


まっすぐ私を見つめてそう言い切って、樹さんは私の顎から手を離した。
そして、そのまま無言でゆっくりと立ち上がる。
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