婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
義兄は静かにそう言って、ね?と意見を求めるように姉に首を傾げて見せた。
姉もそれに何度も頷く。


二人が言いたいことはわかる。
樹さんは、この三ヵ月で私を受け入れようとしてくれてるんだから。
ただ、恋愛を知らない私がついていけないだけで。


「……でも、『落としてみろ』なんて。私、どうしたらいいのか……」


大人な二人の雰囲気に気が緩み、ついボソッとそんな泣き言を漏らしてしまった。
それを聞いて、姉はフフッと笑う。


「でも、元々は帆夏が焚き付けたんじゃないのかなあ」

「え?」

「だって、黙ってればそのまま進む政略結婚だったのに、帆夏はわざわざ先に彼に出会って恋をして、気持ちをぶつけてきたんでしょう?」


そう言われて、私は口籠った。


晴れ渡った空から注ぐ陽射しに照らされた立派なリビングで、姉の笑顔はいつ見ても綺麗だけど、今はほんのちょっと意地悪だ。
恋をした、気持ちをぶつけてきたとは言っても……恋を知らない私には、それが正しかったのかもわからない。


「でも、婚約者としてお見合いするまで、私全然相手にしてもらえなくて……」


紅茶と一緒に振る舞われたクッキーを指で摘まんで、一口齧りながらボソボソと呟く。
それを聞いて、姉と義兄が顔を見合わせた。
答えてくれたのは義兄の方だった。
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