婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「……可愛い~……」


四つ年上の男の人に、そんなこと言ったら怒られそう。
いや、年上とかじゃなく、樹さんならきっと私がそんなことを言ったと知ったら、絶対に不機嫌になる。
でも、本当に可愛いと思うんだから、漏れた言葉を飲み込むことも出来ない。


いつもいつも私には毒舌と暴言ばかりで意地悪な樹さんも、こうやって眠る姿はとても無防備で、寝顔はとっても無垢だ。
私は子供みたいな樹さんの寝顔をそっと覗き込み、無意識に手を伸ばしていた。
滑らかな頬に触れて、思わず指でわずかに開いた唇をなぞってしまう。


途端に、ドキドキと鼓動が騒ぎ出した。
私……この唇に、キスされたんだ。
樹さんの、この色っぽい唇に。


そんな自分の思考に煽られて、私は樹さんの方に大きく身体を乗り出していた。
樹さんの唇を見つめたまま、そっと身を屈めて……。


心の中で、お願い、起きないで……!と祈った、その時。


「ん……」


短く漏れた声と吐息で指先をくすぐられて、私はドッキ~ンと大きく鼓動を跳ね上がらせながら、慌ててその場にしっかりと立ち上がった。
< 160 / 236 >

この作品をシェア

pagetop