婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
そしてその夜。
私が作ったハンバーグを『褒め所はないけど、まあまあ』と言いながら完食した樹さんが、リビングのソファでゆったりと寛いでいるところを狙った。


「い、樹さんっ!!」


食器を片付け終えた後、カウンターを回り込んでリビングに入り、昼間と同じスタイルで寝そべる樹さんの前に立ちはだかる。


「なに?」


頭の後ろで組んだ腕を枕代わりに顔を上向け、短い言葉と素っ気ない目線だけで問われて、私は思わず口籠る。
そして、まさに昼間のことを思い出して、カアッと頬が熱くなるのを感じた。
勢いよく呼びかけたはいいけど、自分の鼓動があまりに猛烈に騒ぎ出す。
あまりの後ろ暗さに、とても次の言葉を繰り出すことが出来ない。


「……帆夏。なに?って聞いてんだけど」


目の前に立ったまま身体を硬直させて立ち尽くす私に、樹さんは姿勢も変えずに眉を寄せた。


「あ……あのですね」

「うん?」

「……あの……」


言いたいことはちゃんと頭の中で決まってる。


『明日、私とデートしてください!』


口を開いて勢いに任せて口走ればそれで済むことなのに、私はその言葉を声に出すことが出来ないまま、ただパクパクと唇を動かした。
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