婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
なのに。


「……はあ?」


樹さんの返事は、思った通りの素っ気なさで、しかもつまらなそうだ。
地味に傷付きながら目を開けた私の前で、彼はよっと短い掛け声を掛けてソファに身体を起こした。


「死にそうな顔して声掛けてきたわりに、『デート』?」

「は、はいっ……」

「……つまんねー」

「うっ……」


聞き慣れた毒舌でも、私にとっては真剣だったからこそ、勇気の出し損みたいでへこんだ。
シャツを握り締めた両手をカタカタと震わせながら、私は大きく顔を俯ける。


そんな私を黙って観察した後、樹さんはニヤッと意地悪に口角を上げて、下から顔を覗き込んできた。


「そのくらいのことで、そんなに緊張する意味がわかんない。……お前、なんか俺に隠してることあるだろ」

「えっ……」

「挙動不審になるくらい、後ろめたいこと?」


鋭く言い当てられて、ギクッとしながら顔が強張るのを抑えられない。


「い、いえっ……! そんな、樹さんに隠し事なんて、滅相もない!!」


頭にまで汗を掻きそうな気分で、私は慌ててそう言いながら無駄に胸を張って見せた。
それでも樹さんは追及の手を止めず、ニヤニヤしながら足の上で頬杖をつく。
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