婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
視界がグルッと回転して、私は大きく天上を見上げる。
樹さんは上から私を見下ろしながら、頬に触れ、唇を指でなぞってくる。


触れられる感覚にドキッとしながら、私は慌てて声を上げた。


「いっ、樹さ、起きて……!?」


私の記憶の奥底だけで眠らせたはずの数時間前の自分の行動を、今まさに樹さんが私に再現している。
ドッドッと心臓が大きな音を立ててけたたましく動き出し、頬がカアッと火照るのを感じた。


「起きてたよ。頬撫でられて、唇なぞられて。この後コイツ、なにしてくるかなって、楽しみだったんだけど」


降り注ぐ照明を遮り、代わりに自身の影を私に落としながら、樹さんは目を細めた。
そんな言葉を口にして、私がしたのと同じ行為を繰り返されると、昼間の私の邪な気持ちが嫌でも脳裏に蘇ってくる。


私、あの時……樹さんにキスをされたことを思い出してドキドキしながら、つい……。


「ごっ……ごめんなさいっ」


思わずぎゅうっと目を閉じながら、両手で顔を覆い隠した。


どうしよう。どうしよう。
まさかあの時、樹さんが起きてたなんて。
眠ってるのをいいことに、樹さんにあんなことしようとしたって、気付かれちゃうなんてっ……。


「なにしようとしたかは知らないけど。……どうせ襲うなら、寝込みじゃなくて起きてる時にしろ」


樹さんは私から手を離しながら静かにそう呟いた。
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