婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
そんな私をチラリと見遣り、青木さんは軽く唇を尖らせながらパソコンをぼんやりと眺めた。


「大事なのは今の仕事と将来自分のものになる会社。その役に立つ情報と人脈。いくら帆夏ちゃんが生駒副社長の娘って言っても、自分の為にならない人間だから、あんなに意地悪でつれないって思ってたんだけど」


なにか考えるように呟いて、青木さんは樹さんのデスクに顔を向けた。


「……なのになんで帆夏ちゃんのこと名前で呼ぶようになるんだか」

「え?」

「どう頑張っても、春海君が堕ちることはないと思ってたんだけどなあ……」


ギクッと肩を強張らせる私の前で、青木さんはわずかに考え込むように首を傾げた。
このまま探られたら、私と樹さんの政略結婚に行き着いてしまいそうな青木さんに、ちょっと焦る。


正式に発表する前に、直属の部下や同僚に知られることを、樹さんは歓迎しないだろうから。


「え~っと……え~っと、私……そ、そうだっ!」


今はこの場から逃げておくべき!と、無理矢理行先を考えた。
残念ながら仕事に絡めるような場所を思いつかないけど、私はとにかく立ち上がる。


「ちょっと、お茶を買いに……」

「お茶ならあるじゃない。まだ」

「あっ! え~っと、じゃあコーヒーをっ……」


ジト~ッと不審げな視線を全身に浴びて、背筋に変な汗が伝うのを感じながらも、青木さんの追求から一時退避する為に、私はオフィスを飛び出した。
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