婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
情けない。
すごく嬉しかったからって、肝心のチケットを失くしてしまうなんて、私、舞い上がり過ぎだ。
本当に救いようのないバカ。
また樹さんに呆れられてしまう……。


「せっかく樹さんが私にくれたのに……」


言いながら、自分を呪いたくなってくる。
じわっと目に涙が浮かぶのを感じて、泣いてる場合じゃない!と自分を叱咤した。


デートそのものが台無しになるわけじゃない。
樹さんに事情を話して謝って、チケットを買い直せばそれで済む。


それで、済む、けど……。


私は未練がましくもう一度食堂全体を探しながら、カーディガンのポケットに何度も手を突っ込んだ。
何度も同じエレベーターに乗って、もしかしたら風で別のフロアに舞い込んだかも、と、結局各階で降りてまで探し回った。


樹さんが自分で買ってくれたのかもしれない、と思った時、妄想してしまったいろんなことが私の脳裏を過る。


私のこと考えてくれたかな。
どんな顔して席選んでくれたのかな。


考えるだけで嬉しくてきゅんとしてしまった後だから、あのチケットがとても大事で諦めきれない。


「どうしよう……」


自分の取るべき行動を決断しきれない。
降りたこともないフロアで途方に暮れて立ち尽くしながら呟き、私はグスッと鼻を鳴らしてから腕時計で時間を確認した。
そして……。


「えっ……」


呆然と、目を見開いた。
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