婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
二人ともまっすぐスクリーンに顔を向けていて、通路に立ち尽くす私には気付かない。
だけど私はあまりの動揺に立ち尽くしてしまい、動けない。


通路際の席に座った女の人が、横に立ち尽くす私を訝し気に仰ぎ見るのを感じて、私は慌てて席を探すフリをして階段を一番上まで上り切った。
映写室の窓ガラスを背に、樹さんと青木さんの頭だけを見下ろす。


「どうして青木さんが……」


わざわざ疑問を口に出さなくても、どういう経緯でこんな状況になっているか、想像は出来る。


青木さんは私が落としたチケットを拾ったんだ。
だけど、私がなにを探しているか言わなかったから。
まさか、映画のチケットだとは思わずに……。


もちろんそう考えたけれど、私の胸には醜い疑惑も浮かんできてしまう。


本当に? それだけ?


青木さんが拾ってたなら、私が言わなくても、なにを探してるか察しはついたんじゃないかな。
『もしかしてこれ?』って聞いてくれても良かったのに。


一度疑ってかかってしまうと、嫌な感情が湧き上がってきてしまう。


チケットを落として、意地になって探し回った挙句遅刻したのは自業自得なのに、それもこれもみんな青木さんのせいのような気分になって。
今、私が樹さんの隣に座って映画を観れないのも、青木さんの意地悪のせいだ、なんて人のせいにしたくなって。
< 182 / 236 >

この作品をシェア

pagetop