婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
いつもと変わらない攻撃力抜群の意地悪な笑みで、ねっとりと探るように小首を傾げる青木さん。
入社してから今までの付き合いの中でも、青木さんに秘密を握られてはいけないと、私だってわかっていたはずだった。


なのに、私ってば……!!


「どうやら、大人の『ママゴト』してるみたいね。……そのせいかな、春海君の変化って」


ニヤア……っと歪む青木さんの笑み。
心底ぞっとして、私は青木さんの前から一路退散しようとした。


「失礼します!!」と言って踵を返そうとした時。


「見込みありそうじゃない。帆夏ちゃんの『ママゴト』の恋も」


サラッと背に掛けられた言葉に、私は思わず足を止め、そおっと振り返った。
私の視線を受けて、青木さんは腕組みしたまま、ニコッと笑う。


「今まで通り、素直に本気をぶつければいいのよ。帆夏ちゃんらしく」

「……私らしく?」


言われた言葉を自分でも繰り返す私に、青木さんは大きく力強く頷いた。


「……どうせ私が見れない夢なら、一生懸命な女が叶えてくれる方が、見てて楽しいってもんよね~……」


そう言って、俯きながらフッと笑った青木さんに、ちょっとドキッとしながら。
私に夢を託されたような気分で、昨夜から底辺を彷徨っていた気持ちが上昇し始めるのがわかる。


私らしく。素直に。
その言葉に、背中を押してもらった気分だった。
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