婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
だけど……。


「ごめんなさい。ちゃんと戻って仕事します。でも、少しでいい、話がしたいんです。五分でいい。……ううん、三分でも……!」


顔を下に向けたまま大きな声を張り上げ、思い切って顔を上げた。
樹さんはわずかに眉をひそめただけで、それ以上私を咎める様子はない。
それを見て、私は一度大きく息を吸った。


「幼稚園児にしないでくださいっ……! そりゃ、樹さんに比べたら赤ちゃん以下かもしれないけど、私、樹さんのこと、本当に好きです。樹さんがなにより大切です……!! 」


社長室に反響するくらい声を張って、私はそう訴えた。
本当にわずかにだけど、樹さんが怯んだ様子が感じ取れる。


「だから……もう樹さんの許可なんかいりません! 私、絶対に樹さんを私一生の宝物にします!!」


声の限りにそう叫び、肩で大きく息をした。


樹さんは呆れてるのかもしれない。
なにも言わず黙ったまま、大きな息を吐くだけだ。


「だからっ……」

「戻れ、帆夏」


容赦なく遮られて、私もさすがに言葉に詰まった。


「話は済んだろ? ここへの立ち入りは、本来一般社員には許可出来ない。機密事項満載の部屋だ。わかるな?」
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