婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
一気に早口でそう言い放ち、樹さんは言葉を切って私から目を背けた。


「それから、時間外でも仕事は山のようにあるから、俺はしばらく実家で過ごす。マンションには帰らない。お前も実家に戻れ」

「……え?」


続いた言葉に呆然として、私は樹さんをまっすぐ見上げた。
そんな私に、樹さんはゆっくり視線を戻す。


「もう同居の意味もない。お試しは終わり。だからお前も、家に帰れ」


それだけ冷たく言い放ち、樹さんは社長のデスクにまっすぐ足を向けた。


「そ、そんなっ……!!」


反射的に声を上げながら、目の前が真っ暗になっていくような気がした。


意味もないって……?
お試しは終わりって……!?


三ヵ月を待たずに、だなんて。
こんな一方的な言われ方じゃ、納得出来ない……!!


「深雪さん? 話は済んだから、帆夏を連れ出してくれないか」


樹さんは涼しい顔をして社長デスクのPHSを手に、そんなことを言っている。


「ま、待ってください、樹さ……」


豪華なマホガニーのデスクを回り込んで樹さんに詰めかけた時、「失礼します」と社長室のドアが開き、深雪さんが入ってきた。


「樹君」

「彼女、頼む」

「はい」


短い会話でも、阿吽の呼吸。
樹さんがPHSを卓上ホルダに戻した時には、私は深雪さんに肘を掴まれていた。
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