婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
その日から、樹さんは本当にマンションに帰ってこなくなった。
オフィスのデスクも、綺麗に片付いたまま。
いつも普通に顔を合わせていた場所なのに、遠目に姿を拝むことも出来ない。


オフィスでも家でもやらなきゃいけないほどの、社長の補佐ってなに……?


樹さんから全権を託されている主任に聞いてみたけど、さすがに経営サイドの仕事のことで、聞いてないと言われてしまった。
『むしろ生駒さんの方が詳しいんじゃないの? 副社長の娘なんだしさ』と返され、私の方が聞かれてしまう始末。


樹さんと全然会えなくなってから二週間が過ぎた週末、私は意を決して実家に出向き、リビングで父と向き合った。


「年末の事業発表会の準備じゃないかな」


父は隠すことなく私に教えてくれたけど、樹さんがどんなことをしているのかはわからないらしい。


「帆夏から直接聞いてみたらいいじゃないか。オフィスでは会えないかもしれないが、話す時間はいくらでもあるだろう?」


逆にそう言われて、私は口籠ってしまった。
父は、彼が今実家に戻ってることは聞いていないらしい。
お試し同居を解消されたことももちろん知らない様子で、私は黙ってマンションに戻るしかなかった。
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