婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
樹さんにはお前も実家に戻ってろ、と言われたけど、私はマンションで彼を待ち続けた。
もしかしたらひょこっと帰ってくるかもしれないし、そのタイミングを逃さずちゃんと話がしたかったから。


だけど十二月初旬を過ぎても樹さんは一度も戻って来ず、もちろん連絡もないまま。
一人きりのクリスマスが過ぎ、世間が年末ムード一色に切り替わり……迎えた今年最後の週末の土曜日。
マンションに突然深雪さんが訪ねてきた。


「帆夏さん、すぐに外出のお支度を」


それだけ言うとマンションの前につけていた黒塗りの社長公用車に私を乗せた。
何事か訊ねる私に深雪さんは、『今夜、事業発表会が行われます』とだけ短く教えてくれた。


社名を冠した公式な発表会は、もちろんドレスコードもある。
深雪さんが全ての手配をしてくれていて、私は髪やメイクを整えてもらいながら、緊張し始める自分を抑えようとしていた。


だって、今夜、間違いなく私は樹さんに会えるはずだ。
ゆっくり話す時間はないかもしれないけど、発表会が終われば、樹さんもマンションに帰ってくるかもしれない。


今度こそちゃんと、樹さんに私の気持ちを伝えなければ。
ちょっとシックな黒いミニワンピースを身に着け、姿見に全身を映した。
私の顔はちょっと強張っていたけど、強い決意を瞳に宿していた。
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