婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
私はついさっき階下のホールで親族・一族に見守られて、樹さんとの結婚式を終えたばかり。
今は親族同士で砕けたムードの立食披露パーティーが行われている。


親族と言えど、事業発表会の時に負けず劣らず豪華な顔ぶれで人数も多い。
人に酔って、外の風に当たりたくなってつい出てきてしまったけど、華やかなドレスに身を包んでるというのに、私は半年前の思い出に浸ってしまっていた。


「ご、ごめんなさい。すぐ戻りますね」


樹さんはさっきから姿勢を変えずに私のドレスを見つめていて、なんとなく照れ臭い。
だって式の前に控え室に来てくれた時は、いつもと同じ意地悪な目で『ドレスに着られてるみたいだな』ってからかわれたから。


私の方は、樹さんの純白のタキシード姿に見惚れて、式の間もずっとドキドキしてたのに。
ちょっと悔しい気持ちになりながら、私は船首に背を向けて、樹さんの方に足を踏み出した。


あまり履き慣れていない高いピンヒールが、床に引っかからないようにゆっくり歩く。
そうやって樹さんの横に並ぶと、樹さんは顎に手を当てて、しげしげと私を見下ろしてくる。


「あの……。さすがに樹さん、見過ぎです……」


照れ臭いを通り越して恥ずかしい。
ドキドキと鼓動が大きく高鳴り出して、私は白いグローブをした手で樹さんのタキシードの袖をキュッと摘んだ。
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