婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
それでも、樹さんは私に視線を落としたまま、小さく「ふむ」と呟く。


「パーティー会場、戻らなくていいか」

「え?」

「帆夏の気分が悪いってことにして、客室に戻ろう」

「えっ!?」


客をほったらかして、なんて言ったくせに、樹さんは涼しい顔で驚くべきことを言いのけた。
思わず目を剥く私の腕を掴み、そのままプロムナードに向かっていく。


「い、樹さん?」


樹さんは私を引っ張ったままプロムナードからデッキに入り、手近なエレベーターで客室層に降りていく。
一等客室のラグジュアリースイートの部屋に入ると、樹さんはドアにしっかりと鍵を掛けた。
そのまま私を奥の寝室に引っ張っていく。


「樹さんっ……!」


驚いて声を上げた時には、私はドレスのままベッドに上向けで横たえられていた。
慌てて起き上がろうとすると、樹さんの腕に阻まれてしまった。


「さすがにヴェールは邪魔だから、外しておこうか」


細めた目で私を真上から見下ろしながら、樹さんが私の頭からヴェールを外す。


「樹さん、なにするんですかっ……」


ふわっと床に落ちるヴェールに視線を走らせる私に、樹さんはシレッとした顔で返事をした。
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