婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「絶対やらかすって思われてるのわかってて、手出せるか、ボケ。お前に手出したら、親父の思う壺だ」

「なっ……!」


身体全体に血が巡り、体温が一度くらい上昇したんじゃないかと思った。
すぐ耳元で鼓動が鳴り響いているように感じる。
私は床についた両手をぎゅうっと強く握り締めた。


それを見て、樹さんはひょいっと肩を竦めた。


「っつーか……この程度で腰抜かすなんて。お前、どういうつもりで俺にバカみたいに『好きだ好きだ』って連呼してたんだよ? それともなに? プラトニックがお好みか?」

「そ、それはっ……」


真っ赤な茹ダコ状態だとわかっていても、私はぼんやりと樹さんを見上げた。
彼は意地悪に口角を上げニヤリと笑った。


「まあ、三ヵ月後には破談にしなきゃいけない女に、敢えて手出そうとも思わないけどね。でも残念ながら、俺、健康な一般男子なんで。魔が差さないとは言い切れないから、同居に同意した以上は、お前もその辺は覚悟しておけよ」


ギョッと目を剥く私をその場に置いて、樹さんはクックッと肩を揺らして笑いながら、ドアの向こうに姿を消してしまった。
一人薄暗い廊下にペッタリと座り込み動けないまま、私は……。


「~~っ!!」


全身心臓のような身体をぎゅうっと両腕で抱き締めて、鼓動が鎮まるのを待つしかなかった。
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