婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
そして、恐ろしく不機嫌丸出しで「相手にしてられん」と言い捨てると、大股でドア口に向かい、一度も振り返ることなく会議室から出て行ってしまった。


その背中にしゅんとしながら肩を落とすと、まだ面白そうに笑いながら、青木さんが私の肩をポンと叩いた。


「まったく、あの男は単純な分、難関だね~」

「単純……? 私には複雑怪奇なんですけど」


一度大きな溜め息をついて顔を上げて首を傾げる私を、青木さんがフフッと笑った。


「帆夏ちゃんは難しく考え過ぎなのよ。基本思考回路が透けて見える男だと思うよ~? それに、なにをするにも駆け引きってもんが大事でしょ?」

「か、駆け引き……?」


そう言われると、なんだかとてもハイレベルな恋のテクニックのように聞こえるけれど。


「押してダメなら引けばいいの。あんたは一途過ぎるから、男の方も気が大きくなるのよ。『ちょっとくらい放っておいても、どうせコイツ俺のこと好きなんだから』なあんて」

「……なるほど」


そう説明されてみれば、確かになにも難しいことはないのかもしれない。
だけど……。


「……樹さんに、素っ気なくって、どうやったら出来るの……?」


真剣に悩んで考え込む私に、青木さんはちょっと呆れた顔をしてから、


「ちょっと耳貸しなさいって」


ちょいっと私の耳を引っ張り、コソコソと内緒話を始めた。
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