婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
「すみませんでした……。青木さんまで一緒に出て来てもらっちゃって」


消え入りそうな声で謝ると、『いい、いい』と明るい返事が返ってきて、ホッとする。


「けどさあ? どうしてそんなに春海君がいい? まあ、社長の息子じゃなかったとしても、それなりにイイ男だけどね。でも、帆夏ちゃんなら春海君と同レベルの男、紹介してもらえそうなもんじゃない?」


そう言われて、私は一瞬口籠る。


なにを差して『同レベルの男』なのか。
それはもちろんわかっているし、父の言う『最高の縁談』を逃したところで、そのうち次の縁談が持ち込まれるだろう……とも思う。


「それにさあ? 『合コンに行く』って言っても、春海君の反応、『そー。行ってらっしゃい』だったじゃない。さすがにあれだけ涼しい顔されちゃあさ……。駆け引きも頑張るだけ無意味って言うか……」


そう、豪華なノシを付けて送り出されてしまった。
定時で仕事を切り上げ、妙にいそいそと帰り支度をしながら、青木さんが樹さんの反応を試してくれたのだけど、悔しいくらい爽やかな笑顔だった。


三ヵ月後には破談にされると言っても、現時点で私は確かに樹さんの婚約者なのに。
樹さんにとって、私は自分の物という意識もないってこと。
私が彼の手から零れても、樹さんは気付かずさっさと先に進んでしまうのかもしれない。
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