婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
だけど、それでも……。


「私……それでもちゃんと、樹さんに恋してるんです……」


俯いてそう言いながら、ホットカフェラテが入ったショートサイズのカップを両手でぎゅうっと押さえ付けた。


「樹さんにも青木さんにも言われた通り、私、全然慣れてないから……。樹さんへの『好き』って気持ち、消し方がわからないんです」


しっかり顔を上げてそれだけを言って、私は勢いよく立ち上がった。


「あ、帆夏ちゃん!」


一人でカフェを出て、通りを二歩歩いた時、青木さんが私に追いついた。
振り返った私に青木さんは呆れたような表情で、肩を落として溜め息をつく。
そんな彼女に小さく首を傾げて、「ありがとうございました」と頭を下げた。


「青木さんに教えてもらった『駆け引き』。私、もっと他の方法で樹さんに仕掛けてみます。他の男の人と仲良くするとかそうじゃなくて。ちゃんと『好き』って気持ちのままで……」


そう言いながら頭を上げて、ニッコリと笑い掛けた……けれど。
青木さんの方は、私を通り越してもっと先のなにかを凝視していた。


それに気を取られ、私も背後を振り返ろうとして、「あ!」と青木さんの短い声に止められてしまう。


「わ、わかった。それじゃあ、帆夏ちゃんなりに頑張って。私に出来ることなら、言ってくれれば協力するしっ」
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