恋愛の始め方
「では、あたしはこれで」


一言断りを入れ、あたしはその場を離れようとする。


「伊藤先生」


あたしは、ほのかちゃんのお母さんに首を横に振る。


「あたしは、看護師です」

「すいません。もし、またほのかが痛みを訴えたら、次はそうします。あの、ありがとうございました」


ほのかちゃんが苦しまないのが、1番良い。

だけど痛みの原因を取り除いてあげるまで、きっと苦しみ続ける。

だから、せめてその苦しみを早く取り除かれることを、今のあたしは願う。

それに、ありがとうと言うのは、あたしの方だ。

ずっと目を逸らしていたが、また大切なことに向き合わせてもらったから。


「ほのかちゃん、良くなるといいですね」


最後にそう言い、再びあたしは歩みを進めた。

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